コラム4 – 腸内細菌が肥満を予防?カギは短鎖脂肪酸

2013年、米科学誌サイエンスに腸内細菌が肥満に影響するという研究成果が発表された。論文を発表したのはミズーリ州にあるワシントン大のジェフリー・ゴードン教授のグループ。

 

腸内細菌と肥満に直接の関係があるかどうかを調べるため、遺伝的にはまったく同一な一卵性双生児で一人が肥満、もう一人は痩せというペアを募集した。それぞれの人の腸内細菌を集め、無菌のマウスに移植したところ、肥満の人から移植されたマウスは、痩せた人の腸内細菌の移植を受けたマウスに比べ、 同じエサや運動量でも明らかに体重が増えていた。

ゴードンさんはさらに2つのグループのマウスを同じケージに入れてみた。マウスは自分の糞(ふん)を食べる習慣があるので、意図しないまま、お互いの糞の中にある腸内細菌の影響を受け合うことになる。すると、肥満の人から細菌の移植を受けたマウスは、痩せた人の腸内細菌の糞を食べた影響で体重が減った。ところが、もともと痩せた人の腸内細菌を持っていたマウスは肥満の腸内細菌の影響をあまり受けなかったという。肥満の人の腸内細菌叢は特定の種類に偏り、細菌の種類の多様性に欠けていることが知られている。痩せた人の細菌叢にはもともと多様性があるため、痩せた人の細菌叢が肥満の人に影響を与えても、その逆にはならないようだ、という。

日本でも東京農工大の木村郁夫特任准教授の研究で、肥満と短鎖脂肪酸と呼ばれる物質に密接な関係があることがわかった。

肥満は体の中にある脂肪細胞が血中の脂肪を取り込み、肥大化することで起きるが、この脂肪細胞の暴走にブレーキをかけるのが短鎖脂肪酸だという。短鎖脂肪酸は特定の種類の腸内細菌が食物繊維を分解して作り出す。それぞれの脂肪細胞には短鎖脂肪酸の存在を感知するセンサー(受容体)がついていて、短鎖脂肪酸の存在を感知すると脂肪の取り込みをやめる働きがあることが知られている。肥満の人は短鎖脂肪酸を作る腸内細菌がもともと少なく、短鎖脂肪酸をつくり出す働きが弱いため、肥満にブレーキがかかりにくいという。

脂肪酸は油脂の成分のひとつで、数個から数十個の炭素が鎖をつなげたような構造になっている。炭素の数が6以下のものが短鎖脂肪酸と呼ばれ、酢酸、酪酸、プロピオン酸などがこれに該当する。体内では大腸に入った食物繊維を腸内細菌が分解し、発酵することで作り出される。できた短鎖脂肪酸の一部は血流にのって全身をまわる。まだ動物実験の段階だが、肥満を気にする人は食事の量だけでなく、腸内細菌を元気にさせる食事を心がける必要がありそうだ。