ライター紹介
笠原 かさはら 和之 かずゆき
博士研究員、循環器内科専門医
神戸大学大学院医学研究科循環器内科学修了。心血管病や生活習慣病における宿主と腸内細菌の相互作用を研究するため、現在は米国ウィスコンシン大学で博士研究員として勤務している。■ResearchGate:https://www.researchgate.net/profile/Kazuyuki_Kasahara

このライターが書いた記事

「マラソンで増える腸内細菌がパフォーマンスを上げる」論文の内容と解釈の難しさ

2019年7月30日
腸内細菌叢の研究はさまざまな分野に広がりを見せており、その例には枚挙にいとまがありませんが、アスリートを対象とした研究は世間の関心を集めるものの1つです。この分野ではアスリートに特徴的な腸内細菌叢を明らかにすることで、将…

プロバイオティクスが抗生剤投与後の腸内細菌叢の回復を妨げる

2019年2月26日
1928年にアレキサンダー・フレミングがペニシリンを発見して以来、人類は感染症に抵抗する武器として抗生剤を手にしました。その発見から100年近くたつ現在でもその重要性は変わりませんが、耐性菌の出現など深刻な問題もあらわれ…

プロバイオティクスは腸管粘膜に定着するか(ヒトの場合)

2019年1月8日
前回、プロバイオティクスは本当に腸内細菌叢に影響を与えるのか、という疑問に答えるための研究の前編をご紹介しました。 プロバイオティクスは腸管粘膜に定着するか(マウスの場合) 前回は実験動物のマウスを使った結果が中心でした…

プロバイオティクスは腸管粘膜に定着するか(マウスの場合)

2018年12月25日
人々の健康意識が広がり健康食品に対する注目が集まる中で、プロバイオティクスの売上げも年々増えています。 プロバイオティクスは、「ヒトに良い影響を与える生きた微生物(いわゆる善玉菌)を含む製品や食品」の総称で、「腸内フロー…

腸の受容体が腸内細菌叢を選り好みする

2018年11月6日
近年、腸内細菌の変化とさまざまな疾患との関連が取りざたされるようになっています。動物実験を中心した研究から、腸内細菌のバランスが悪くなることが病気の原因かもしれないとまで言われています。 しかし、ヒトは生まれる前、つまり…

腸で過剰な免疫を抑える制御性T細胞(Treg)と腸内細菌

2018年6月5日
担当:笠原和之 腸では、侵入しようとする病原菌やウイルス、真菌から体を守ろうと日夜攻防がくり広げられています。その防御策の最大の主役が免疫細胞です。腸の上皮および粘膜下には、非常にユニークな免疫細胞たちが数多く存在します…

トレハロースで増えるクロストリジウム・ディフィシル腸炎強毒性株

クロストリジウム・ディフィシル腸炎は偽膜性大腸炎とも呼ばれ、Clostridium difficile(CD)の異常増殖の結果として発生する腸の感染症です。CDは常在性の嫌気性菌であり、健常者の腸内にも存在していますが、…

免疫チェックポイント阻害薬の治療効果は腸内細菌叢で決まる?

2017年12月19日
がん治療の分野で新たな治療法として「免疫チェックポイント阻害薬」が注目を集めています。この薬の治療効果と腸内細菌叢の関係に着目した研究が最近の『Science』誌から2報同時に報告されました。今回はその結果を中心に紹介し…

腸内細菌叢にも24時間リズムがある、時差ボケは肥満につながるかも

2017年11月15日
2017年のノーベル生理学医学賞は「概日リズムをつかさどる分子メカニズムの解明」に貢献した米ブランダイス大学のホール博士(Jeffrey C. Hall)とロスバシュ博士(Michael Rosbash)、ロックフェラー…

神経難病「多発性硬化症」に関わる腸内細菌が見つかった!

2017年10月24日
多発性硬化症(MS)という病気はご存じでしょうか。MSは、脳や脊髄、視神経に炎症性の病変ができ、視力障害や手足の麻痺、感覚障害といった症状が現れる慢性の神経疾患です。このMSについて、米国科学アカデミー紀要から2報同時に…

食事と腸内細菌がいかに老化に影響するか

2017年8月22日
前回(腸内細菌が作るコラン酸が線虫の健康寿命を延ばす)にひきつづき、老化と寿命のお話です。今回は、線虫やショウジョウバエを用いた研究から明らかになった、腸内細菌が寿命に影響を与えることを表すいくつかの例をご紹介します。1…

腸内細菌が作るコラン酸が線虫の健康寿命を延ばす

2017年7月25日
医学の進歩により、現在の日本は4人に1人が高齢者という超高齢化社会に突入しています。そのような社会において、病気をしないで元気に年をとること、加齢に伴う病気にかからないことは、健康を維持するのみならず、膨大な社会保障費を…

パーキンソン病では短鎖脂肪酸は悪者になる?

2017年6月27日
腸脳相関という言葉があらわすように、腸と脳はたがいに密接に関わっていることが最近わかってきており、その関係の中で腸内細菌叢は大切な役割を果たしています。今回は、神経難病のひとつであるパーキンソン病における腸内細菌の役割を…

動脈硬化と腸内細菌叢の研究はここまで来た——20億円規模の研究も進行中

2017年5月16日
前回は動脈硬化と腸内細菌のつながりについて、TMAOという物質を中心にお伝えしました。しかし実際には、TMAO以外にも様々なかたちで腸内細菌が動脈硬化に関わっていることがわかりつつあります。今回は、それらを私たちのデータ…

動脈硬化と腸内細菌叢をつなげる物質TMAOとは?

2017年4月18日
アメリカの細菌学の研究室で「宿主と細菌叢の連関」をテーマに研究をしている笠原和之です。腸内細菌叢はさまざまな健康状態や病気と広くかかわっていますが、今回と次回の2回にわたって、私の研究分野である動脈硬化と腸内細菌のつなが…

循環器内科医が腸内細菌を研究することになった理由とは?

2017年3月21日
はじめまして。循環器内科医であり、いまはアメリカの細菌学の研究室で「宿主と細菌叢の連関」をテーマに研究をしている笠原和之です。これから、研究の現場から腸内細菌に関するニュースやトピックなどをお届けしていきたいと考えていま…