コラム3 – 乳酸菌で長生きできる?

免疫の研究で1908年にノーベル医学生理学賞を受賞したロシア(現在のウクライナ出身)のイリア・メチニコフはヨーグルトに含まれる乳酸菌が長寿に有用だとする「ヨーグルト不老長寿説」を唱え、自らも実践したことで知られている。長寿の人が多いブルガリア人が常食にしているヨーグルトの中から乳酸菌が見つかり、これに着目したメチニコフは乳酸菌と長寿の研究を精力的に進めた。1907年には「楽観論者の不老長寿論」という、乳酸菌の摂取が長寿に役立つというエッセイを発表し、その数年後には日本語にも翻訳されたという。

最近は、「生体に有用な働きをする生きた微生物やそれを含んだ食品、製剤」をプロバイオティクスと呼んでその効果が注目されているが、メチニコフはプロバイオティクスの概念を100年以上前に提案した先見性でも評価されている。

メチニコフは1916年、71歳で生涯を終えたが、死の床の中で、「自分がヨーグルトの素晴らしさに気づいて食べ始めたのは53歳だった。もっと早く食べ始めていればもっと長生きできたはずだ」と言い残した、と伝えられている。

日本でも光岡知足・東大名誉教授が30年ほど前、長寿者の多い山梨県上野原市の棡原(ゆずりはら)地区で高齢者(平均84歳)を調査し、東京都の高齢者(平均68歳)との比較で、棡原の高齢者は東京よりも善玉菌であるビフィズス菌の割合が多く、悪玉菌のウエルシュ菌の割合が少ないことを突き止めている。
光岡さんは「平均年齢で16歳もの違いがあったにもかかわらず、棡原の高齢者の腸内フローラ(細菌叢)のほうがずっと健康的で、若々しかったのです」と『腸を鍛える』(祥伝社新書)の中に記している。
一方、プロバイティクスとよく似た名前のプレバイオティクスは腸内細菌に有用で、健康維持に役立つ食品成分のことで、オリゴ糖や食物繊維の一部(イヌリンなど)がプレバイオティクスとして認められている。