コラム2 – 次世代シーケンサーが大きな武器に

ここ数年、腸内細菌の研究が劇的に進み始めたのは、米国が進めたヒトゲノム解読プロジェクトの成果のひとつともいえる。ヒトの全遺伝子情報を解読するゲノムプロジェクトは2000年に概要の配列、2003年には詳細な配列が解読されて、大成功をおさめて終了した。

生物のDNA配列を解読するのに使われる装置はシーケンサーと呼ばれる。NIHはポスト・ゲノムプロジェクトとして2004年から新たなシーケンシング(DNA塩基配列の決定)技術の開発を目的に、民間企業に資金提供を開始した。2006年ごろからは米国のベンチャー企業が次世代シーケンサーと呼ばれる高速の読み取り装置を次々に開発し、市場に送り込み始めた。

この結果、遺伝情報読み取り能力は今も飛躍的な向上を続けている。もっともはっきりしているのが読み取りにかかるコストの劇的な低下だ。
NIHの統計によると、2001年9月にヒトゲノム全体を読み取るのに9500万㌦(約114億円)もかかったのが、05年1月には1750万㌦(21億円)、8年後の09年10月には7万㌦(約840万円)にまで下がった。その後も読み取り方法の革新や機器そのものの改良や進歩が続いて、15年7月にはヒトゲノム解読のコストは1363㌦(約16万円)にまで下がった。この15年足らずでコストが約7万分の1になってしまった計算だ。
コンピューターのハードウエアの処理能力は2年で倍増するという有名な「ムーアの法則」があるが、NIHは「2008年頃からのシーケンサーの処理能力の進歩はこれをはるかに上回るペースで進んでいる」と分析している。

2010年前後から、人体各部に住み着く細菌叢の研究が爆発的な勢いで進み始めたのは、高性能で比較的安価な次世代シーケンサーの登場で、研究者が遺伝情報の解読に「きわめて強力な武器」を手に入れたことが最大の理由といえそうだ。