2018年4月10日

自閉症へのプロバイオティクス有効性を検証する研究が進行中

自閉症患者では、消化器症状が頻繁に見られることが知られています。自閉症と消化器症状との関連がはじめて指摘されたのは1971年と意外と古く、Goodwinらにより発表されました1)。その後も類似の研究で関連が証明されています2,3)。消化器症状が出る割合は9〜70%で、最も多いものは慢性的腹痛、嘔気、嘔吐とされています。

自閉症と消化器症状の関連における腸内細菌叢

自閉症と消化器症状の関連は、腸脳相関(腸脳循環とも言う)の破壊によると考えられています。自閉症児の便ではクロストリジウム属(Clostridium)の増加がみられ、また、ルミノコッカス属(Ruminococcus)やステレラ属(Sutterella)の割合が増えることが報告されています4,5)。自閉症児の腸内細菌叢は多様性が低下しており、発酵性の細菌が減少していることも報告されています6)

腸脳相関のメカニズムは複数あり、サイトカインや免疫系、交感神経・副交感神経を介した間接的なものだと言われています。消化器症状の対処をしていない自閉症児は、行動障害が増悪するという報告があります7)。また、自閉症を発症しやすい遺伝的要因を持つ小児において、消化器症状や腸内細菌叢の乱れが自閉症の発症を誘発したり、症状を増悪させたりする可能性があることが示唆されています8)

非薬物療法を目指した研究

これまでの研究では、バンコマイシン投与により、消化器症状のみでなく自閉症の症状そのものが改善することが知られています。しかし、バンコマイシン投与をやめると症状が再発してしまうことが報告されています9)

自閉症の行動障害および消化器症状への対症療法としては、認知行動療法の他には薬物療法が主に行われています。もし、プロバイオティクスやサプリメントなどの非薬剤性物質により、正常な腸脳相関を回復し、自閉症の症状そのものを改善できれば、より低侵襲な治療と言えます。これは今後の研究課題と考えられています。

また、これまでの研究では、腸内細菌叢移植(抗生物質投与と腸洗浄ののち、便移植をする治療法)による腸内細菌叢の改善が、自閉症の症状を改善することが報告されています10)

プロバイオティクスを用いた臨床試験

今回は、腸脳循環に関して、イタリアで開始されているプロバイオティクスを用いた臨床試験を紹介したいと思います。現在進行中の臨床試験ですが、『BMC psychiatry』誌に、プロトコルが紹介されています。

Santocchi E et al. Gut to brain interaction in Autism Spectrum Disorders: a randomized controlled trial on the role of probiotics on clinical, biochemical and neurophysiological parameters. BMC Psychiatry. 16:183, 2016

このRCTの目的は、プロバイオティクスを自閉症児に投与して、消化器症状のみではなく、自閉症の認知機能や言語発達が改善するかを評価することです。また、こういった目的に付帯して、自閉症との関連が示唆されている、尿中フタル酸塩濃度も評価される予定とのことです。

【方法】

自閉症と診断された未就学児100人(18〜72ヶ月)を、消化器症状のあるグループとないグループとに分類。各グループはさらに二重盲検法にて、プロバイオティクスを投与する群とブラセボとに分けられ、計4群に割り振ります。

投与されるプロバイオティクスは、水溶性のVivomixx®です。最初の1ヶ月で1日あたり2パック(9000億の細菌が含まれている)、次の5ヶ月で1日あたり1パック(4500億の細菌が含まれている)が継続的に投与群に投与されます。

Vivomixx®: Streptococcus thermophius DSM 24731、3種類のBifidobacterium属(B. breve DSM 24732, B. longum DSM 24736, B. infantis DSM 24737)、4種類のLactobacillus属(L. acidophilus DSM 24735, L. plantarum DSM 24730, L. paracasei DSM 24733, L. delbrueckii subsp. bulgaricus DSM 24734)が配合されたもの

http://www.vivomixx.eu

いずれのグループに対しても、投与開始前、投与開始後3ヶ月、投与開始後6ヶ月の時点において、以下の項目が評価されます。

1) 消化器症状: GI severity Indexなど
2) 自閉症の重症度: ADOS-2
3) 愛着障害や行動障害の程度: CARS, SCQ, CBCL1.5-5, RBS-R, The Sensory Profile, PSIなど
4) 血漿や便、尿中のバイオマーカー濃度: 血中LPS, Leptin, Resistin, TNF-α, IL-6, PAI-1, 尿中フタル酸
5) 神経生理学的評価: 脳波など

これらに加えて、上記3時点で、体重、BMI、投薬の状態、副作用の状態などについても記録、評価が行われます。また、腸内細菌叢に影響すると思われる食習慣についてですが、両親が1週間ごとに記録をつけ、変化をモニターするとのことです。

除外基準は、MRIなどで脳の形態異常が確認されている人、神経学的な疾患を有している患者、新生児仮死の既往のある患者、重度の低出生体重児、てんかんの既往のある者です。また、もちろんではありますが、消化器系の器質的疾患のある患者も除外されています。

自閉症の診断は、DSM-5に従って、専門家により厳格に行うとのことです。また、治療および観察期間の6ヶ月は、腸内細菌叢の再形成にかかる期間が2〜3週間、臨床症状の改善にかかる時間を考慮して設定されています。

【データ解析】

サンプルサイズは一群につき50例が必要とされています。これは、プライマリーエンドポイントであるADOS-2の差を評価するのに必要な人数に基づいて、nQuery advisor 6.2というソフトウェアによって算出されたものです。得られたデータは、ANOVAやw2検定、Fisherの正確検定などの手法により解析するとのことです。

自閉症症状そのものを改善できるかに注目

この研究は現在まだ進行中ですが、薬物療法や細菌叢移植よりも侵襲性の少ないプロバイオティクスで、消化器症状のみではなく自閉症の症状そのものまで改善されることが証明されるかどうかが期待されています。結果如何では、自閉症治療に新しい情報がもたらされるかもしれません。

プロバイオティクスの有効性が示されれば、今後、薬剤によらない、負担の少ない治療の発達に寄与する可能性があるといえるでしょう。

参考文献

  1. Googwin MS et al: Malabsorption and cerebral dysfunction: a multivariate and comparative study of autistic children. J Autism Child Schizophr. 1(1):48-62., 1971
  2. Klukowski M et al: Sleep and gastrointestinal disturbances in autism spectrum disorder in children. Dev Period Med. 19(2):157-61.,2015
  3. Fluceri F et al: Gastrointestinal symptoms and behavioral problems in preschoolers with Autism Spectrum Disorder. Dig Liver Dis. 48(3):248-54.,2016
  4. Parracho HM et al: Differences between the gut microflora of children with autistic spectrum disorders and that of healthy children. J Med Microbiol. 54(Pt 10):987-91.,2005
  5. Wang L et al: Increased abundance of Sutterella spp. and Ruminococcus torques in feces of children with autism spectrum disorder. Mol Autism.4(1):42.,2013
  6. Kang DW et al: Reduced incidence of Prevotella and other fermenters in intestinal microflora of autistic children. PLoS One. 8(7): e68322. ,2013
  7. Mazefsky CA et al: The association between emotional and behavioral problems and gastrointestinal symptoms among children with high-functioning autism. Autism. 18(5):493-501.,2014
  8. Finegold SM et al: Pyrosequencing study of fecal microflora of autistic and control children. Anaerobe. 2010 Aug;16(4):444-53.
  9. Sandler et al: Short-term benefit from oral vancomycin treatment of regressive-onset autism. J Child Neurol.15(7):429-35.,2000
  10. Kang DW et al: Microbiota Transfer Therapy alters gut ecosystem and improves gastrointestinal and autism symptoms: an open-label study. Microbiome. 5(1):10.,2017