2018年3月27日

ニワトリの細菌叢が分解した栄養素はどうなる?

ニワトリの細菌叢は、さまざまな栄養素を分解し、有益な物質を作っています。炭水化物、タンパク質、脂質に注目して見ていきましょう。

ニワトリのエネルギー源を作る細菌叢

ニワトリでは消化管内の細菌叢が、食餌性の多糖類を分解しています。他の多くの哺乳類同様ニワトリ自身も、この処理のために必要な酵素である糖質加水分解酵素グリコシドハイドロラーゼ、多糖の付加脱離反応を触媒する酵素ポリサッカライドリアーゼ、そして炭水化物をエステル化する酵素をもっていないからです。

近年、遺伝子解析により、盲腸の微生物が、炭水化物代謝に大きく貢献していることが明らかになりました。炭水化物の分解に関与する酵素や、輸送や代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子が、この盲腸環境中の遺伝子全体のうち20%以上と、多く存在していることが明らかになったのです。

この多糖類の分解過程で、細菌は様々な短鎖脂肪酸(SCFA)を産生します。このSCFAの組成は、細菌叢の構成によって変わり、細菌叢の構成は食物中の繊維質に応じて変化します。

ニワトリを含め、多くの腸内環境で産生される代表的なSCFAは酢酸塩、その次に酪酸やプロピオン酸が続きます。酪酸濃度は生理的に非常に重要です。なぜなら、結腸上皮の主要エネルギー源であり、結腸細胞の恒常性維持に寄与し、形態学的にも結腸壁の絨毛形成に欠かせないからです。

これら3種の主要SCFAは、結腸の筋系および血管系組織において、水和作用やエネルギー源としての重要な役割を担っています。まず、液体や電解質の取り込みを刺激、促進し、上皮経由で吸収します。また、エネルギー源として、一般的に日々のエネルギー要求量の10%(ヒト)〜70%(反芻動物)を賄っています。ニワトリの正確な要求量は未だ明らかではありませんが、酪酸は成長能力の向上に効果があることが既にわかっています。

窒素代謝の主役は細菌叢

消化管内の細菌叢は、窒素代謝にも寄与しています。タンパク質を、アミノ酸を経て窒素化合物にまで分解します。

ニワトリが摂取する食餌中のアミノ酸に含まれる窒素のうち、卵や体組織を構成するタンパク質などに利用されているのは、半分にも満たない量です。残りの窒素の大部分は、アンモニアとして体外に排出されます。排泄物に含まれる水分が適量に減少するまで、消化管内細菌叢は食物残渣の代謝分解を続行します。その過程で、窒素を代謝してアンモニアを産生、それを含む排泄物を排出するのです。

排泄物から直ちに空気中に揮発したアンモニアは、ニワトリの健康にも有害で、成長率の低下や疾患を引き起こします。アンモニアが多いと、排泄物の肥料化効率も悪化させます。また、養鶏場で働く人にも有害で、ヒトにとっても問題となります。それだけでなく、空気中の硫黄酸化物と結合し、大気汚染の原因物質として近年問題になっている微粒子PM2.5を形成したり、酸性雨の原因物質になったりして、社会的にも問題となるのです。

このような様々な問題を軽減するためにも、アンモニアの産生量を下げ、窒素を効率よく体内で利用するために適した細菌叢のバランスについて研究されています。

有名な脂肪酸も細菌叢が作っている

最も研究されている細菌叢由来の脂肪酸が共益リノール酸(CLA)です。多価不飽和リノール酸の生物性の水素添加により、中間物質として細菌叢により産生されます。

CLAは鶏肉として利用される筋肉部分にも含まれており、脂質にも取り込まれます。肉用鶏の場合、除脂肪体重を増加させるためのサプリメントとしてCLAが利用されています。しかし産卵鶏の場合、付加的な投与は、卵の品質(脂肪酸組成やpH)や卵からの胚発生に影響が生じることも知られています。

ニワトリの細菌叢を理解して人間社会に活かす

このように細菌叢の分子生物学的研究に基づいて、産生するSCFAを増加させる、窒素の消費や排泄を抑える、できるだけ効果的な脂肪酸を産生させる、などが可能になると考えられています。つまり、飼養されるニワトリをより健康に保ち、その品質を向上するためにも、細菌叢のはたらきを科学的に理解することが重要なのです。

ニワトリ由来の食材にはよく出会いますが、このような細菌叢に関する科学的知見が、気づかないうちに活かされているのです。

参考文献