2017年2月7日

編集長からのごあいさつ——腸内細菌叢に心地よく住んでいただくために

皆さん、はじめまして。「Mykinsoラボ」の編集長を務めることになりました島田祥輔(しまだしょうすけ)です。

Mykinsoラボは、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう、腸内フローラともいいます)に特化したメディアです。腸内細菌叢に関する話題を取り上げ、腸内細菌叢が私たちにとって仲のいい「住民」だと思っていただきたいと考えています。

就任のごあいさつということで、改めて腸内細菌叢とは何か、なぜ私が関わることになったのかということについて紹介いたします。

腸内細菌叢は「もう一つの臓器」である

腸内細菌叢や腸内フローラという言葉を聞いたことがあるかもしれません。自分の体は自分の細胞からできていると思いがちですが、実際には口や鼻の中、皮膚の上、そして体の中には大量の細菌が住んでいます。細菌にとって人間の体は居心地がいいので、あえて「住んでいる」と表現しました。

私たちの体に住んでいる細菌の中でも、大腸に住んでいるのが腸内細菌です。腸内細菌と一言にいっても、一人の大腸の中に何百種類も住んでいます。そのようすがお花畑のように見えることから、腸内細菌全体のことは腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれています。

腸内細菌は、ただ大腸にいるだけではありません。胃や小腸で消化、吸収されなかった食べ物を食べ、その副産物としてヒトに役立つ、もしくは害となる物質を作っていることが少しずつわかってきました。それらの物質が、肥満、アレルギー、糖尿病、自閉症などに関係しているのではないかと考えられています。

健康の鍵は腸内細菌が握っている——「腸内サミット」レポート

特集:腸内細菌と健康との関わり

つまり、腸内細菌もまた食べ物をしっかり分解して、私たちの体を作っているのです。このことから、いろんな種類の腸内細菌が集まった腸内細菌叢のことを「もう一つの臓器」とよぶ研究者もいます。ちなみに、腸内細菌叢の重さは1キロちょっとで、肝臓と同じくらいです。

もう一つの臓器である腸内細菌叢のことを考えて生活することは、ゆくゆくは自分の健康につながります。逆に、生活習慣が悪ければ腸内細菌叢も悪化します。腸内細菌叢はヒトという家にいる住民ですが、家がボロボロだったら住民はいい気分はしないですよね。家も廃れていく一方です。

腸内細菌叢は「第2のゲノム」でもある

少しだけ、私の話をします。

大学院の修士課程では、生き物が卵の状態からどんなふうにして体ができあがっていくのか、特に心臓を作るのに関わる遺伝子について研究していました。サイエンスライターとして独立してからも、遺伝子に関する記事を多く書いています。自分の遺伝子を調べる解析サービスを何社も受けて比較する、なんていうこともしてきました。

遺伝子解析サービスをいろいろ試す中で出会ったのが、腸内細菌叢を調べるMykinso(マイキンソー)というサービスです。また一つ自分のことがわかると思い、すぐにクラウドファンディングのサイトでキットを購入しました。

写真は、当時購入したキットです。

遺伝子と細菌と関係があるのか、と思われるかもしれませんが、大いに関係があります。一人の大腸に住む腸内細菌は数百種類。その遺伝子の合計は数百万種類にもなると推測されています。ヒトの遺伝子は約2万2000種類ですから、私たちの100倍以上の遺伝子を腸内細菌叢はもっています。

これらの遺伝子を解析することは20世紀までは困難でしたが、ヒトゲノムが解読された21世紀になって、腸内細菌叢の遺伝子を解析する技術もまた大きく発展しました(このあたりのことはいずれどなたかに書いていただこうと思います)。ヒトゲノムの「ゲノム」とは、すべての遺伝情報のことです。そのため、ヒトの100倍以上の種類の遺伝子をもつ腸内細菌叢は「第2のゲノム」とよばれることもあります。

自分の遺伝子を変えることはまず不可能ですが、生活習慣が変われば腸内細菌の種類が変わり、腸内細菌叢のようすは変わります。つまり、第2のゲノムは変えられるのです。

腸内細菌叢との共存を社会全体に広げたい

もう一つの臓器であり、第2のゲノムである腸内細菌叢は、大腸という真っ暗なところに住んでいます。そこにスポットライトを当てるのがMykinsoラボです。

Mykinsoラボでは、腸内細菌叢についての話題最先端の研究成果腸内細菌叢にやさしい料理Mykinsoユーザーの活用例などを紹介します。腸内細菌叢の研究は日々進歩していますが、学術的根拠に基づいた正しい情報を発信することで、まずは腸内細菌叢そのものに興味をもち、そして皆さんの日々の健康に役立てていただくことが、Mykinsoラボの目的です。

また、医師や栄養士など、腸内細菌叢と生活指導に関心のある方にも積極的に活用していただき、腸内細菌叢との共存を社会全体に広げる上で手助けになるメディアでもありたいと考えています。

今年から個性豊かなライターも多く集まりました。新体制となったMykinsoラボをどうぞよろしくお願いいたします。