2018年1月9日

【腸内細菌叢】2017年に発信した注目記事のご紹介

「Mykinsoラボ」編集長の島田です。2018年もよろしくお願いいたします。

昨年のMykinsoラボは、ほぼ毎週新しい記事を提供することができました。大半は最近の研究成果を紹介するものであり、それほど腸内細菌叢の研究が盛んになっていることを意味します。さまざまな免疫疾患や精神疾患が腸内細菌叢と関連しているという指摘もあります。

もちろん、多くは基礎研究の段階です。正確な因果関係や、介入によって疾患を治療できるかどうかについては、さらなる研究が欠かせません。

特に疾患の治療については、臨床研究を重ねる必要があります。テレビなどでは、健康な人の便を潰瘍性大腸炎などの患者さんに移植して治療する「糞便移植」がニュースとして取り上げられることもありますが、今すぐに全員が受けられる治療法ではありません。設備と人材が整った施設で、臨床研究としてリスクとベネフィットを見極めたうえで、一般に普及するべきかどうか慎重に検討しなければいけません。

個人的には、もう一つ何かブレークスルーがあると、基礎研究も臨床研究も大きく進展するのではないかと期待しています。

さて、新年を迎えるにあたり、昨年のMykinsoラボを振り返りましょう。昨年の記事の中でも、特にアクセス数の多かったもの、編集長オススメの記事を5本紹介します。

動脈硬化と腸内細菌叢をつなげる物質TMAOとは?

動脈硬化と腸内細菌叢をつなげる物質TMAOとは?

米国ウィスコンシン大学で動脈硬化と腸内細菌の関係を研究している方の記事です。トリメチルアミンNオキシド(TMAO)の血中濃度が高いほど心血管疾患になりやすいこと、血中濃度に影響を与える因子の一つに腸内細菌があるというご自身の研究が紹介されています。

母親の細菌叢は妊娠や出産とどう関係するのか——母体と胎児の細菌生態学

母親の細菌叢は妊娠や出産とどう関係するのか——母体と胎児の細菌生態学

妊娠から出産、そして初期の授乳における細菌叢の変化についてのレビュー論文を紹介した記事です。細菌と早産との関係も指摘されており、将来的には細菌に注目する妊婦ケアが登場するのかもしれません。

腸内細菌の多様性は体重増加と関係がありそうだ——最新の研究結果

腸内細菌の多様性は体重増加と関係がありそうだ——最新の研究結果

多くの人が気になるであろう体重との関係。1632人の女性を平均約9年間追跡した調査では、腸内細菌叢の多様性の低下と体重増加が相関することが明らかになりました。対象はコーカソイド系(ヨーロッパから北アフリカ、西アジア)であるため、日本人でも同じことがいえるかどうかわかりませんが、今後の研究に期待しましょう。

ウサギの食糞——なぜ赤ちゃんウサギは親の糞を食べるのか

ウサギの食糞——なぜ赤ちゃんウサギは親の糞を食べるのか

ヒト以外の動物でも、腸内細菌は大切や役割を果たしています。腸内細菌は多くの生物で普遍的な存在なのかもしれません。この記事では、親が出した細菌豊富な糞を食べる赤ちゃんウサギに注目しています。

世界中のコンピューターで分担してマイクロバイオームを研究する「The Microbiome Immunity Project」がスタート

世界中のコンピューターで分担してマイクロバイオームを研究する「The Microbiome Immunity Project」がスタート

腸内細菌を含むマイクロバイオームの研究では膨大なデータを計算しなければいけません。その計算を、世界中のパソコンで分担しようというプロジェクトです。家庭のパソコンでもできるので、興味がある方は参加してみてはいかがでしょうか。

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今年もMykinsoラボは、腸内細菌叢に特化したメディアとして、さまざまな腸内細菌叢ニュースを届けます。食事管理(いわゆるダイエットやプレ/プロバイオティクス)についても、学術論文をもとにした正確な情報提供に務めます。どうぞお楽しみに。