2017年10月3日

世界中のコンピューターで分担してマイクロバイオームを研究する「The Microbiome Immunity Project」がスタート

今年8月末、MIT、ハーバード、マサチューセッツ総合病院、カリフォルニア大学サンディエゴ校、サイモンズ財団のフラットアイアン研究所の研究者らが参加し、IBMが支援する細菌叢(マイクロバイオーム)研究プロジェクト「The Microbiome Immunity Project」がローンチしました。

The Microbiome Immunity Projectは、世界中の人々が所持するコンピューターの使用していない余剰の処理能力を活用し、ヒトのマイクロバイオームに含まれるタンパク質の構造を決定するための仮想実験を大規模に行います。

詳しくは後述しますが、インターネットに接続したコンピューターを所持している人であれば、誰もがボランティアとしてプロジェクトに参加可能です。

タンパク質の構造を決定し、創薬に役立てる

ヒトのマイクロバイオームを作る細菌のほとんどは消化器系におり、基本的には無害で有益なものです。しかし、ときには、1型糖尿病、大腸がん、クローン病などを引き起こす原因要素となります。また、ヒトがもつ免疫系との関わりも注目されています。

細菌と病気の関係を解明するためには、細菌が生成したさまざまな種類のタンパク質の構造を解析する必要があります。タンパク質の構造が機能を決めるからです。

それぞれのタンパク質の機能が決定された後、タンパク質同士がどのように相互作用するのか、どの種のタンパク質がどのような病気を引き起こし、どのような役割を果たしているのか、ということを研究します。

研究結果は、タンパク質をコントロールする薬のデザインや、病気の治療に役立てられます。

世界中のコンピューターで仮想実験を実施

ヒトのマイクロバイオームを構成する細菌の遺伝子は約300万にも及び、それらの遺伝子に対応したタンパク質の構造を決定するのは、現状の実験室の設備では不可能です。

そのため、コンピューターを使った仮想実験によるタンパク質の構造予測が用いられます。しかし、それにも膨大なコンピューターの処理能力が求められます。

そこで、IBMが運営する「World Community Grid」が、大きな役割を果たします。World Community Grid は、世界中のボランティアの人々が所持するコンピューターの余剰の処理能力を活用して、大規模なデータ解析を実現します。

The Microbiome Immunity Projectは、このWorld Community Grid の協力により、マイクロバイオームのタンパク質の構造予測を推し進めます。タンパク質の構造を予測する仮想実験が、世界中のボランティアのコンピューター上で実施されるのです。

また、The Microbiome Immunity Projectの研究結果は、他の研究者にも公表されます。世界中の研究者、ボランティアが協働し、マイクロバイオームと病気の関係を研究する世界規模での動きが起きています。

ボランティアとしてのプロジェクトへの参加はThe Microbiome Immunity Projectのウェブサイトの「Contribute to this Project」ボタンをクリックし、アプリをダウンロードすることで可能です。

Macのアプリ画面はこのようになります。アプリはWindows、Mac、Linuxに対応しています。