米バイオ医薬品企業と非営利団体が協業、「糞便入り」感染症治療薬の開発へ
バイオ医薬品企業のFinch Therapeutics社と、世界中から健康な人の便を集める非営利団体OpenBiomeが協業し、Clostridium difficile(クロストリジウム・ディフィシル)感染症を治す経口投与の糞便入りカプセルFIN-403の開発・生産体制の整備、米食品医薬品局(FDA)の承認を目指すと発表しました。
クロストリジウム・ディフィシル感染症に罹ると死に至ることも
クロストリジウム・ディフィシル感染症とは、抗生物質を投与した際に正常な腸内細菌叢が損なわれ、病原性の細菌が増殖することによって引き起こされる感染症のひとつで、症状は下痢、吐き気、発熱などです。重症化した場合には敗血症や髄膜炎を引き起こし、最悪の場合、死に至ります。米国では年間約45万3000人がクロストリジウム・ディフィシル感染症を患い、2万9000人が亡くなっていると推測されます(OpenBiomeのサイトより)。
治療方法として、発症原因となった抗生物質とは別の抗生物質の投与がありますが、治癒率は20~30%と決して高くありません。そこで、より高い治癒率の治療方法として近年注目され始めたのが、健康な人の便を患者の腸内に移植する「便細菌移植療法」です。
糞便入りカプセルで治療する
この「便細菌移植療法」を推進して多くの患者を治療するため、OpenBiomeは「糞便バンク」を設立し、世界中から健康な人の便を集めてきました。しかし、従来の「便細菌移植療法」では、健康な人の便を患者の腸内に移植するための大腸内視鏡を利用できる設備が必要で、患者はその設備が整った病院に出向く必要がありました。
そこで、OpenBiomeは治療をより簡易にし、多くの患者が治療を受けられるよう、経口投与の糞便入りカプセルFIN-403をFinch Therapeutics社と協業して開発しました。FIN-403を患者26人に投与した結果、治癒率88%という結果が出ました。
OpenBiomeはFinch Therapeutics社に、バイオ製造の品質管理システムのライセンスを供与する予定。Finch Therapeutics社は製造システムを洗練・発展させることで、糞便入りカプセルFIN-403がFDAから認可を受けられるよう目指します。 2017年下半期、FIN-403のフェーズ2のプラセボ対照試験を実施予定です。
OpenBiome
マサチューセッツ工科大学(MIT)のマイクロバイオロジーの研究者Mark Smith氏とビジネススクールMBA学生のJames Burgess氏が2012年米国ボストン拠点に設立した、クロストリジウム・ディフィシル感染症の患者を救うことを目指す非営利団体。http://www.openbiome.org
Finch Therapeutics社
MIT、OpenBiomeの研究者らが2014年米国ボストン拠点に設立した、腸内細菌のバランスの乱れが原因の病気の治療法の研究・開発を目指すバイオ医薬品企業。http://finchtherapeutics.com